特許出願書類には「願書」、「特許請求の範囲」、「明細書」、「図面」、「要約書」の5つの書類があります。
弊社ではこのうち「図面」作成のご依頼をいただくことがあります。
特許で出願できる発明がどのようなものか、また「特許図面」について、やさしい内容ではありますがブログにしたいと思います。
国によって違う「発明」の定義
特許の保護対象となる発明はどのようなものなのでしょうか。
日本の特許法では「発明」を次のように定義しています。
「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの」(特許法第2条第1項)
◇自然法則を利用
重力に逆らって重りが動くなど、自然法則に反する内容の発明は保護の対象外です。
また、自然法則そのものは発明ではありませんので特許としての保護はされません。
計算方法も人為的な取り決めであって自然の法則ではないことから発明には該当しません。
◇技術的思想
個人の熟練度に依らない、一定の目的を達成できる具体出来な手段であることが発明には求められます。
知識として伝達でき、実際に利用できるものが特許法上の「発明」となります。
例えば野球の変化球の投げ方などは個人の技能ですので発明にはなりません。
◇創作
「発明」と「発見」は区別されます。
新しいことを造り出すことが「発明」とされ、エックス線の発見は発見であって発明ではないとされています。
「エックス線装置」であれば特許がとれるでしょうか。
◇高度
上記の要素「自然法則を利用した技術的創作」の中でも高度なものを発明と定義しています。
産業界に大きな影響を与えるものでないといけない、というわけでもなく
従来品を改良したものでも特許として認められます。
発明の定義は国によって異なり
アメリカでは「人間が作った新規かつ有用な製品・プロセス」、欧州では「技術的なもの」とされています。
特許を受けることができる発明とできない発明
特許を受けるためには、特許法での「発明」に該当してかつ、下記の条件を満たす必要があります。
・特許法上の発明であるか(上記「発明」の定義を満たすものであるか)
・産業として実施できるか
・新しいかどうか
・容易に考え出すことができないか
・先に出願されていないか
・公序良俗に反する発明でないか
・明細書の記載は規定通りか
これらの条件は特許要件とされ、特許法における「発明」のうち「特許要件を満たす」ものが特許の審査対象となります。
形状ありきの意匠と、形無きものも保護できる特許
意匠との決定的な違いは「無形のものでも特許では保護できる」という点です。
意匠は形状に機能を由来するものを保護するため図面の提出が必須となっています。
この点については以前のブログ「意匠とは?意匠図面とは?」を参照ください。
特許では「発明」の定義に当てはまり、特許要件の条件を満たしているものであれば、形のないものも保護対象となります。
特許図面は、出願書類として「なくてもいい」
発明の内容理解に役立てるために添付されるのが特許図面です。
冒頭で特許出願書類の5つのうちの1つとして挙げていましたが、実は必ず図面が必要というわけではありません。
化合物の合成方法など、発明の内容によっては必要でない場合もあります。
必要ないとは言っても、図面の提出を含む特許出願は多数行われています。
形状をしっかりと指し示した特許図面も見受けられますし、審査官により特許内容を理解してもらうためにも
特許図面が有効な場面は多数あることでしょう。
「なくてもいい」特許図面を依頼いただくということ。
特許図面は、出願の際に必ずしも必要というわけではありません。
そうした実情がある中、弊社に多数ご依頼をいただいているということは、大変ありがたいことと思います。
弊社はどのような案件であっても、誠心誠意をもって対応させていただきます。
◇参考文献◇
産業財産権標準テキスト[特許編] 企画:経済産業省 特許庁 発行:独立行政法人 工業所有権情報・研修館(人材育成部) 発行:2009年3月
産業財産権標準テキスト[総合編] 企画:経済産業省 特許庁 発行:独立行政法人 工業所有権情報・研修館(人材育成部) 発行:2009年3月
記事担当:佐々木 紗野(ささき さや)
株式会社ニテコ図研3年目社員。芸術系大学卒で芸術・デザイン関係への関心が高い。会社内ではWEB・教育事業・意匠写真を主に担当している。思ったことをすぐ口にするタイプのため独り言が多く反省中。
趣味はサイクリング。
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